花暦 
   絶滅の危機に瀕して

特にアツモリソウは、ラン科植物のなかでも花が大きく、美しいため「野生ランの王者」と言われています。園芸的価値が高く、多くの個体が盗掘され減少してきました。
第一次の山野草ブームは、昭和40年代後半から昭和50年代前半にかけての高度成長期。林道などの建設が盛んに行われ、奥山へのアプローチが容易になり、比較的簡単に入れる地域の野生ランの盗掘が頻繁に行われ個体数が減少しました。
その後、山野草ブームと、さらに奥地の開発が進んだことで、残されていた生育地と個体が盗掘によって激減、絶滅寸前の状態となりました。
環境庁が平成9年8月に公表した「レッドリスト」によると、文献・標本などで生育が確認されたアツモリソウのうち、34%の地域でしか生育を確認できない絶滅の危機に瀕している稀少種なのです。
国内産のアツモリソウ アツモリソウ(C. macranthum var. speciosum)

 いわゆる国内で見られる”普通のアツモリソウ”です。
【分布】本州(長野県、静岡県以北)、北海道
【自生環境】中部地方では、標高1000~2000mの草地。北へ行くほど低山にも自生しています。夏に周囲の草が伸びてアツモリソウに日陰を作る草地や明るい林内に自生しています。
【草姿・花色・花期】高さ15~40cm、先の尖った楕円形に葉を三から五枚互生。五~七月に、淡紅色の花をつけます。普通は一花、花の径は4~5cm。
ホテイアツモリソウ(C. macranthum var. hotei-atsumorianum)

 世界に誇れる日本の代表的なアツモリソウ。姿や花が大きて非常に見栄えが良く、地域変異のバリエーションが多いため、非常に人気があります。
【分布】本州中部(長野:釜無,大鹿,経ヶ岳,霧ヶ峰,戸隠,安房、山梨:櫛形,八ヶ岳、新潟、岩手)、北海道(厚岸,留萌,武徳,崕山,神居古潭,大平山,定山渓,新十津川,敏音知,幾春別)、中国、ロシア。しかし、盗掘・乱獲のために、既に絶滅してしまっている地域も多く、1997年にレブンアツモリソウに相次いで特定国内希少野生動植物指定を受けました。
【自生環境】アツモリソウとほぼ同様。
【草姿】高さ20~50cm、アツモリソウに比べて幅の広い楕円形(時に円形に近いものがある)の葉を四から五枚互生し、アツモリソウに比べて全体に大きいです。
【花色】アツモリソウより濃く、桃色から紅色、黒ずんだ暗濃紅色の花と非常に多くの地域・個体バリエーションがあります。希に白花もあります。花の径は6~10cm
【花期】六月。
レブンアツモリソウ(C. macranthum ver. rebunense)

 北海道、礼文島の固有種。釜無、北海道ホテイと並んで3大人気種のひとつ。その気品溢れる姿に誰もがあこがれをいだきます。
 世界で最も美しいアツモリソウと言っても過言ではなく、当園で最も力を入れている種です。
【分布】かつては全島に自生していましたが、盗掘により激減してしまったため、厳重な保護活動が行われ、1994年特定国内希少野生動植物に指定されました。その結果、現在では保護区には約4000本以上が確認されています。
【自生環境】低山の草地から海岸に続く斜面、低山の谷筋の流れのそば、海岸のすぐ近くの低地。
【草姿】高さ15~30cm。楕円形の葉を3枚互生。
【花色】白~淡黄色。開花数日で色が抜けて白くなるタイプが多いですが、希に黄色の濃い個体も存在します。花の径は5~7cm。
【花期】自生地の花期は六~七月。
キバナアツモリソウ(C. guttatum var. yatabeanum)

 本州中部、北海道、外国ではカムチャッカ、アリューシャン列島、アラスカ南部に分布。高さ20~30cm。葉は二枚が向き合って出るので一見対葉のように見えます。花は3.5cm程。側花弁の先端部が細くくびれ、唇弁が下方に離れて、側花弁との間が空きます。茎・花茎に毛が生え、花色は淡黄色に茶褐色の斑紋が入ります。当園では同種の素心花も維持・繁殖させております。花期は六月~七月。
C.カルセオラス(C.calceolus)

 世界に最も広く分布しているアツモリソウで、北欧・スペイン・ギリシャ・イギリス・中国北部・シベリア東部、サハリンに分布します。国内では北海道本島の他、礼文島でも少数の自生が確認されています。日本のものは高さ15~60cm。ヨーロッパのものは丈が低く、20~50cm。楕円形の葉を三枚互生。一~二花をつけ、芳香があります。花被片は茶褐色~黒褐色、側花弁は長くらせん状に捻じれ、唇弁は黄色で、内側に紅色の斑点を持ちます。花期は五~六月。
コアツモリソウ(C. debile)

 国内では北海道南部から九州、外国では中国・台湾に分布します。
 高さ5~10cmの小型種。二枚の葉が向き合ってつきます。
分類上は、アツモリソウの仲間
ドウトウアツモリソウ(C. shanxiense)

 北海道北見地方。以前はカラフトアツモリソウとして扱われていた。奥山秀樹氏によって中国北東部・ロシア極東地域に分布が知られる、シャンクシエンセの隔離分布であると指摘されました。更に1997年井上健氏の自生調査によってアロザイム解析が行われ、礼文島のカルセオラスとは異なる植物であると結論し、これに「ドウトウアツモリソウ」という仮名を与えました。当園でも数株を維持しております。
チョウセンキバナアツモリソウ(C. guttatum)

 ヨーロッパから中国・北米と広く分布しますが、国内では秋田県のごく限られた地域のみ分布しておりました。以前より趣味の世界では「デワノアツモリ」と呼ばれていましたが、チョウセンキバナアツモリの隔離分布と考えられております。地元秋田県では「オガノアツモリ」と呼ばれることもあります。しかし、もともと生息数が少ないうえに、乱獲が行われ、更に栽培が困難なことも重なって、現在維持されている個体は非常に少ないと考えられます。
   
   
   
   
 中部森林管理局内のアツモリソウ属は5種類  アツモリソウ

低山から亜高山の草地や明るい林内に生育する、高さ20~40cmの多年草です。葉は3~5枚で互生し、茎の先には径3~5cmの淡紅色の花を下向きにつけます。
和名は「敦盛草」。袋状の唇弁を平敦盛が背負った母衣に見立てて名前が付けられました。
中部森林管理局が保護事業を行っているアツモリソウは、岩手県のアツモリソウと遺伝的にほとんど分化が見られず、北海道アツモリソウと近縁で、日本のアツモリソウの平均的な特徴となっています。
   ホテイアツモリソウ

本州中部の亜高山帯に生息する、高さ25~40cmの多年草です。葉は3~5枚で互生、茎の先に径4~5cmの紅紫色の花を下向きにつけます。アツモリソウに比べて唇弁が丸く、花の色も濃く、やや大きめです。

   キバナアツモリソウ

亜高山帯の林床や林縁に生育する、高さ10~30cmの多年草です。長さ7~15cmの長楕円形の葉を2枚つけます。
花は緑黄褐色で、横向きに1つ咲くのが特徴です。
   クマガイソウ

山地の林内に生育する、高さ20~40cmの多年草です。葉は径10~20cmの扇円形で、2枚がほぼ対生しています。径8~10cmの大きな花が横向きに1個咲きます。アツモリソウ同様、源平合戦の熊谷直実の母衣に見立てて、クマガイソウの名前が付けられました。(撮影:木原浩)
   コアツモリソウ

山地の樹林下に生育する、高さ10~20cmの多年草です。茎の先に広卵形の葉が2枚対生します。葉の間から花茎を出して、淡黄緑色に淡紫色のぼかしのある花が下向きに咲きます。